大西洋クロマグロの高いツケ

私もトロは大好きですが、今回の大西洋クロマグロの事件はどう考えても日本のマスコミや政府の「うまく切り抜けた、一安堵」という反応が納得出来ません。

スウェーデンや英国のメディアは大きく報道しています。たとえば英国エコノミスト http://www.economist.com/science-technology/displaystory.cfm?story_id=15745509 は、大西洋クロマグロの資源はピーク時の15%にまで減少しており、 「Eaten away (食べ去られた)」という記事で、「リビアの代表が突然劇のようにわけの分からないことを大声でしゃべりまくり、即議決を求めた」等の会場の混乱した様子が報じられています。

リビアはいうまでもなく1988年のパンナム機爆破事件などで、欧米では「テロリスト国家」とみなされています。

エコノミストは投票の前日には現地の日本大使館は多くの途上国の代表を招き、トロを振る舞って協調を依頼したことも報じています。

欧米にとっては、今回の事件で、資源保全問題については、日本は完全にリビア、中国、アフリカ、南米等の途上国サイドとみなされたことでしょう。今朝のテレビ番組で寺島実郎さんがいみじくも指摘されていました。「コペンハーゲンのCOP15で中国や途上国に向って温室効果ガス削減を呼びかけていた日本の政策との整合性が問われる」と。

赤松農水大臣は「クロマグロの資源管理の日本のリーダーシップの責任は大きい」と述べています。それはもちろんで、たとえリーダーシップを発揮して資源管理に成功したとしても、資源環境問題についての日本の発言力は大幅に後退したと言わざるを得ないでしょう。ツケは高そうです。

大西洋クロマグロの乱獲問題は昨年夏欧州でも大問題になっていました。
「投票前日に大使館で途上国の代表にトロを振る舞ったこと」以外に日本政府はどのような外交対策をとってきたのでしょうか、知りたいものです。