『スウェーデンはなぜ強いのか』(北岡孝義著、PHP新書)

『スウェーデンはなぜ強いのかー国家と企業の戦略を探る』by  北岡孝義 (PHP新書)を読みました。

 

北岡さんは経済学博士で明治大学教授。専門は金融・ファイナンスの実証分析。2003年からたびたびスウェーデンを訪れられている。以下の章でとくに迫力のある論を展開されています。

 

第三章 スウェーデンの企業 −H&Mとイケアに見るスウェーデンの企業戦略

第四章 新しい福祉政策と年金改革 −持続可能な制度の構築に向けて

第五章 成長戦略としての福祉

終章  スウェーデンから何を学ぶか

 

終章の以下の結論には納得です。

 

「福祉は、経済成長の原動力となりうる。(中略)福祉は経済の成長を促進させる。1つは、福祉は新たなビジネス、産業を創出すること。2つは、福祉は、セイフティネットの構築を通じて、労働生産性を高めること。(中略)3つは、福祉は、国民の将来への不安を軽減させ、総需要の拡大に寄与すること。」(pp. 172-173)

 

「われわれ日本人は、スウェーデンから何を学ぶべきであろうか。(中略)スウェーデンの個々の具体的な福祉政策ではなく、福祉政策をうまくワークさせているスウェーデンの国民の制度や政治に対する信頼だ。(中略)その信頼がどのように形成されているかを学ぶべきだ。」(p.184)

 

私自身の持論である、「福祉と経済と持続可能性の共存が可能なことをスウェーデン・モデルは示している」との共通点が多く、心強い。

 

難をいえば、細かな点では不正確と思われる情報も見られました。たとえば「現在の首相ラインフェルトも経済学者である」(p.175) は誤りです。ラインフェルトさんはストックホルム大学で経済経営学(civilekonom)を学びましたが、研究歴はありません。