幸福の議論が盛んですね。
政府が昨年12月に発表した「新成長戦略」では、生活者が本質的に求める幸福度を表す新たな指標を開発し、向上を目指すそうだ。
4月27日に内閣府が発表した調査結果では、日本人の幸福度はデンマークや英国より低いという。
今朝の日経経済教室のテーマは〈幸福の経済学〉。
興味深かったのは「順応仮説」。「人々が環境変化に慣れてしまい、幸福や不幸をもたらす環境の変化があったとしても、その影響はしばらくすると消えてしまう。幸福に影響する事象による幸福度の変化は4日程度しか持続しない」そうだ。
幸福研究の他にも、たとえば脳研究のソーシャル・ブレインの視点、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)、行動経済学、等々、主観的な要素に注目したり、個人の関係性に注目する学際的な研究が盛んだ。
雑誌「科学」3月号の特集〈幸福の感じ方・測り方〉には興味深い論文が多い。ここではその中から2つの論文を紹介したい。
その一つは、「洋の東西で幸福感にどのような違いがあるか」(北山忍)。
「アメリカ人は、幸福とは基本的に個人が獲得するものであると考える結果、対人関係と「幸せそのもの」をほとんど重ね合わせない。(中略)逆に私たち日本人は個人的成功と「幸せそのもの」を重ね合わせることをしない。幸せが対人関係によって規定されている東洋文化では、幸せとは、周りの理解と協力・協調があって初めて可能になるのである。(中略)最近は「KY」といって揶揄するらしい。なぜなら、周りに常に気を配っていないと関係に埋め込まれた幸福は失われてしまうかもしれない」と結んでいる。
二番目の「幸福と人間・社会−創造的定常経済システムの可能性」(広井良典)は、フィンランドなどを例にとり、「福祉と環境と経済」あるいは「平等と持続可能性と効率性」の新たな相乗効果が生じつつある現在、「創造的定常経済システム」または「創造的福祉社会」とも呼ぶべき社会のありようを構想していくべき時期に来ている、と提言している。
そして、R.フロリダなども引き、以下のようにも述べている。
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「創造性」が発揮され開花していく広い意味での創造性が、これからの時代における人々の「幸福」というもののひとつの中心にあるように思われる。
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「知業時代」の創造性の重要性を主張する私としては我が意を得たり、である。
もちろん、創造性は「ひとつの中心」ではあっても、すべての中心ではなくてもだ。
幸福の文化人類学と幸福の教育学。 幸福の科学の関心はどんどん広がります。