ヘンリク・ベリグレン氏(Dagens Nyheter紙論説委員)が著者の一人の本書のタイトルは「スウェーデン人は人間か?」と挑発的だが、福祉社会の根幹的な問題を扱っている。
つまり、副題にあるように「現代スウェーデンにおける連帯感と個人の自立」である。
福祉社会では、個人の自立、自由と共に、社会の連帯感、一体感の両方が必要な前提条件で、その共存の手法が問われる。
スウェーデン型の福祉社会は、個人が他人に依存する必要がないほど自由で解放されるという国と個人の合意の上になりたっている。つまり、個人は家族、会社等に依存する必要がない。ゲマインシャフトの裏には自立した個人のゲゼルシャフトが隠されている。(これを著者はden svenska statsindividualismen, スウェーデン型国家個人主義と呼んでいる)
Den svenska teorin om kärlek (スウェーデン型愛情論)と著者が呼ぶ2番目の仮説は、夫婦、親子間等の愛情は、決して経済的依存によるものではなく、平等で相手の個人の自立を尊敬する関係である。
しかもこのようなスウェーデン型の福祉社会の根幹は、1930年代以降の「社会工学的」政策によって創られたものではなく、スウェーデンの長い歴史的背景の結果であると、著者は検証している。
たとえば、福祉政策の3つの重要なプレイヤーである、個人、国、家族の関係について、独、米、瑞の違いを以下のように説明している。(pp 69-73)
ドイツでは国と家族が一体になって個人に対峙する。ドイツの福祉政策は家族が単位である。
アメリカでは家族と個人が一体になって国に対峙する。
スウェーデンでは国と個人が一体になって家族と対峙する。もちろんその前提にはナイーブなほどの国に対する信頼感がある。
福祉国家を目指す日本も当然、連帯感と個人の自立の両方が必要です。
この本は日本語に訳される価値がありそうです。(2006年刊)