スウェーデンの9-19の総選挙の結果、政局は依然不透明である。
現行の中道右派政権は多数を占めたものの、単独では過半数に達しないので、連立が必要になる。国会が開会される10月5日までに連立交渉の可否が問われることになる。
今回の選挙結果で私がとくに注目しているのは、社会民主党の大敗である。
社会民主党は1934年から半世紀以上スウェーデンで政権を担当し、世界一と言われる福祉国家を築き上げてきた。しかし、今回の選挙結果(得票率30.8%)は過去100年で最低である。
社民党の大敗にはモーナ・サリーン党首(初の女性党首)の不人気など個人的な要因もとりざたされている。2013年に予定されている通常の社民党大会の前に臨時党大会を開催する要求も上がっている。
しかし、党首個人の問題はさておき、やはり、政策の内容に注目したい。
右の写真は今回躍進した穏健党の選挙ポスターの一枚で、「ただ一つの労働者党が仕事を守れます」(new穏健党)と書いてある。
一方、かつての「労働者党」であった社会民主党は「中流階級党」を目指し、税制など受け身の政策論争に終始した。
今回の選挙では、被雇用者の22%、現業労働者(LO組合員)でも50%しか社民党に投票しなかった。
仕事も、住宅も持つ中流階級の社民党離れが加速している。
その背景には、「仕事や自分の住宅を持つ」安定さが、これからの福祉の前提と考えるスウェーデン国民が増えていることもあろう。つまり、かつてのように、失業しても、住宅がなくとも、国が面倒をみてくれる、と考えている人が減っているようだ。
今回の選挙戦では、「solidalitet, 連帯意識」という福祉社会の根幹のキーワードはほとんど耳にしなかった。
社民党の大敗と穏健党(自称労働者党)の躍進の背景には、スウェーデンの福祉政策の変化、社会構造と意識の変化、など大きな変化が内蔵されている。
23日に出会ったLOのラーションさんにも社民党の今後の再生戦略を質問したが、明確なアイデアは戻ってこなかった。スウェーデンの福祉政策の変化、社会構造と意識の変化に社民党がどう対応して行くのか、注視していきたい。