現役のスウェーデン公使の2年間の駐在の想いがパーソナルなタッチで書き綴られており、好感を抱かせてくれる一冊です。
「スウェーデンに駐在して、私の人生の中でも初めてというくらい、長い思索の時間が与えられた」成果だそうです。(p.281)
〈「日本はスウェーデンになるべきか」という問いを発しつつ、読み進んでいただければと思う。〉と著者は「はじめに」で述べています。(p.10)
第二章ではスウェーデンの本質として、〈自立した強い個人〉〈規則に基づく組織力〉〈透明性〉〈連帯〉の4つをあげています。(pp.37-86)
そして「おわりに」では以下のように締めくくっています。
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読者の皆様は、日本に「スウェーデン的生き方」を実現すべきだと思われたであろうか。(中略)それに必要な「スウェーデンの本質」を身につけようという気持ちをお持ちだろうか。また、そのような社会を日本人は幸せと感じるのだろうか。
これらの問いにすべてイエスと答える方は、「日本はスウェーデンになるべきだ」という意見に賛成票を投じるかもしれない。強い個人として自立し、 組織全体のためルールを遵守し、連帯の精神を発揮する、本書ではこのような「スウェーデン的生き方」を様々な個所で紹介した。(pp.280-281)
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これらの設問は、スウェーデンと日本に関心のある社会人や学生との読書会のテーマにしたいですね。
スウェーデンの優良企業を買収したスズキ・ガルピッタン社、トヨタインダストリーズヨーロッパ社の現地リポートは臨場感があります。(拙稿「貧しい農業国から豊かな福祉知業国家への軌跡」も引用して頂いて深謝)
ご専門の外交を扱う第6章も迫力があります。
「筆者は日本とスウェーデンがそれぞれアジアとヨーロッパにおいて、〈法の支配、人権の尊重、民主主義〉の原則を強調する運動の主要な先頭ランナーであるべきだと考えている」(p.273-275)というご発言には期待したいものです。