昨年の日本の貿易収支が31年ぶりに赤字に転じたことが大きく報じられています。
確かに日本経済または産業構造の歴史的転換を象徴しているかもしれません。しかし、それに対してどのように対応すべきかは明白でしょう。
・産業構造の〈知業化〉、すなわち知識産業化、知恵産業化によって付加価値を高めること。非価格競争が可能な産業構造への転換です。
・貿易収支が赤字になっても、日本の所得収支(海外子会社からの配当金など)は11兆円強の黒字で、経常収支は黒字です。たとえ低賃金に依存する製造工場は海外に移転しても、日本国内に強力なR&D(研究開発)など知識・知恵の拠点を維持出来るなら、海外からの特許などのライセンス収入や配当収入で経常収支の黒字維持は可能なのです。
・下に経常収支の内訳の日瑞比較をしてみました。以下のような違いが分かります。
・スウェーデンの経常収支の対GDP比 (6.7%、2010)は日本(3.6%)よりも高い。
・中身をみるとスウェーデンは貿易収支の黒字額も大きいが、サービス収支が決定的に違う。日本は大幅な赤字だが、スウェーデンは経済規模は日本の約12分の1であるにも拘わらず、日本とほぼ同額の黒字を計上している。
・スウェーデンのサービス収支の中身は、運輸(+128SEK)、(海外)旅行(-165億SEK)、その他のサービス(+1328億SEK)で、スウェーデンも旅行収支は赤字ですが、運輸とその他のサービスで稼いでいるのが日本との違いです。
表 経常収支の内訳 日本とスウェーデン(2010)
2010年 | 日本(億円) | スウェーデン(億SEK) | スウェーデン(億円換算) |
経常収支 | 17兆1706 | 2198 | 2兆6736 |
貿易収支 | 7兆9789 | 794 | 9658 |
輸出 | 63兆9218 | 1兆1359 | 13兆8170 |
輸入 | 55兆9429 |
1兆 671 |
12兆9802 |
サービス収支 | △1兆4143 | 1290 | 1兆5692 |
所得収支 | 11兆6977 | 579 | 7043 |
経常移転収支 | △1兆 917 | △445 | △5413 |
(名目GDP) | 479兆1725 | 3兆3081 | 40兆2396 |