日経電子版の吉野浩一郎氏の記事〈世界では上昇、日本では下落 魚の値段に潜む悪弊〉を読んでこんなことを感じました。
「昔から名のある漁師は良い値段で売るために釣れる魚も釣らずに帰ったもの」
は苦戦するNIPPONの産業企業が十分咀嚼すべきことではないでしょうか。先日スカイマークのサービスコンセプトの議論に関して、「サービスの価値と値段」について話題を提供しました。
以下は長くなりますが、日経の記事からの引用です。
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「魚価の低迷」が叫ばれて久しい。築地を代表とする東京都中央卸売市場で取引される水産物の平均価格は1990年台前半の1キログラム996円をピーク とし、2009年には2割安い802円まで下落した。新興国の消費増加による魚価上昇が国際トレンドとなっている近年、世界屈指の水産国であるはずの日本 の生産者は、なぜその恩恵を受けられないのか。(中略)
価格が下がっているのは築地だけではない。2005年以降、エジプトやナイジェリアなどアフリカの国から日本産のサバへの引き合いが急増した。理由は「世界最安値のサバ」(水産商社)だから。(中略)
一般的に、魚は大型になるほど価値が増す。例えば北海道や三陸などで漁獲されるキチジ(別名キンキ)。成魚になれば卸値で1キロ3000円程度になるが、築地では「豆キンキ」などと呼ばれる小型のものが数百円で出回っている。 (中略)
問題は「商品価値が低い魚の乱獲を防ぐルール」が不在なことにある。ノルウェーやニュージーランドなどの漁業先進国では漁業者ごとに漁獲枠が決められている。魚種ごとの資源状況に応じて取れる重量が前もって決められているため、網の目を大きくするなどして商品価値の高い大型の魚だけを、水揚げが少なく相場が高い時期に取ろうとする。
対照的に日本の漁業は基本的に“早い者勝ち”。自分が取らなくても他の誰かが取るので、漁師は商品価値が低くても「取られる前に取る」というスタンスにならざるをえない。(中略)
カツオ一本釣りで知られる高知のベテラン漁師は言う。「昔から名のある漁師は良い値段で売るために釣れる魚も釣らずに帰ったもの。それが結果的に生産調 整と資源保護につながっていた」。低迷する魚価を押し上げるカギが「どれだけ上手に魚を取るか」にあるのではなく、「どれだけ上手に取らないか」にあるこ とは、一部の当事者たちも気付いている。