"利他性の経済学"再確認 Economics of Altruism reconfirmed

Driva Eget Dagen (起業セミナー)は今回も700人の参加者で会場は満席でした。

 

〈サクセス・エキスパート〉Annika R Malmbergさんのメッセージは〈顧客のパーソナリティに合わせよう〉。

 

人間のパーソナリティには次の4つのパターンがあり、その組み合わせであることが多いという説でした。

 

−結果、行動、目標指向、スピード、集中が大切

ー分析、質、批判的分析

ー外向的、明るい、クリエイティブ、

ー調和、関係性、家族重視

 

そして自然の豊かなスウェーデンは伝統的には緑タイプのパーソナリティーが多い、ということでした。

 

メイン・スピーカーはChrister Olsson氏。スウェーデンでも最も人気のスピーカーの一人だそうです。

彼のメッセージのポイントは、以下のように要約出来ます。

 

・時代は情報社会から〈信頼社会 Trust society〉に移行している。組織内、組織外の信頼が大切な時代である。そして信頼をゲットするためには、①能力と②思いやり、の2つが大切な要因である。

 

・顧客自身が"体験する価値"が大切で、それはどの程度顧客、自分のことを思いやってくれているか、により判断される〈主観的〉な経験である。

 

・稼ぐことではなく、〈稼ぐに値する価値を提供〉すれば結果的に自ずと稼ぐことが出来る。

 

そして具体的なエビデンスとして以下のような例があげられました。

 

・少し遠いお店でも思いやってくれ気の合う店員がいるのでわざわざ買い物に行くことがありますか?  →       80%の回答者がはい、と答えた。

・少し値段が高いお店でも思いやってくれ気の合う店員がいるのでわざわざ買い物に行くことがありますか? → 70%の回答者がはい、と答えた。

・スウェーデンの大企業の購入担当者に〈セールス担当が気に入ったので、ベストではない案を採用したことがありますか?〉 全員がはい、と答えたそうです。

 

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私も永く関心を持ち続けてきた〈利他性の経済学〉の精神がここでも確認されました。

 

たまたま今日ネットで同じようなメッセージを含む記事を見つけました。佐々木俊尚(ささき としなお 作家・ジャーナリスト)さんのインタビュー記事です。

 

佐々木さんは東京大学先端科学技術研究センターで「渋滞学」を研究されている西成活裕教授(下のMUJICOLOGY研究所のビデオ)と、4月にイベントでの対談が予定されています。

 

「渋滞学」は、道路で他の車との車間距離を保ったり、無駄な車線変更を減らすことで、渋滞を防ぐだけでなく、目的地に早く着くことができるという研究成果を数学でも実験でも立証し、注目されている学問です。

 

キーワードはスピードダウン、車間距離、車間時間、譲り合い。短期的な効率を目指すよりもこのようにして長期的にはより良い結果がえられる。

 

佐々木さんは情報の分野でも渋滞があり、その解決には思いやり、譲り合いが大切だと主張しています。私がこれまで考えてきたことと重なることが多いので、少し長くなりますが引用させて頂きます。

 

インターネットの登場により、毎日膨大な情報が洪水のように押し寄せる状態になっています。昔なら新聞やテレビなどのマスメディアを一通りチェックすれ ば、世の中の状況が把握できたのに、今ではネットを通して大量の情報が流れ込み、とてもすべてチェックしきれません。また、ネットの性質上、自分に都合の 良い情報ばかり閲覧することができてしまうので、偏った世界の見方がどんどん助長されてしまう。これらは「情報の渋滞」だと言えると思います。

 

たとえばソーシャルメディアで他人を口汚く罵ったり、陰謀論のような過激な投稿ばかりする人がいたとします。そういう人は、興味本位で集まってくるユー ザーとは繋がれるかもしれませんが、情報リテラシーの高いユーザーは離れていってしまいます。すると質の良い情報が集まってこなくなり、自分が発信する情 報の質も悪いまま。そして、情報リテラシーの高いユーザーからさらに敬遠され……

 

ネットによって人間関係が可視化されることにより、「正直者がバカをみない」世の中になってきていると言えます。昔の映画を観ていると、善良で正直な人が ずる賢い人間に騙されるみたいなイメージがステレオタイプに描かれていることが多い。なぜ、そんなイメージがあったのか。それは、当時の社会にとって、 「善良であることのインセンティブが低い」と、皆が無意識に感じていたからだと思うんです。しかし、今のような透明性の高い社会では、むしろ善良であるこ とのほうが得をするケースが増えてきています。

 

最近では山崎製パンの配送トラックが、大雪で高速道路に閉じ込められたドライバーたちにパンを配ったというエピソードが話題になりました。昔なら埋もれて しまっていたかもしれなかったこうした美談も、現代ならネット上で拡散して多くの人に伝わります。山崎製パンのドライバーは、損得を考えて行動したわけで はないにも関わらず。

 

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全く同感ですね。

 

利他性、ボランティア、プロボノ、社会的企業、パラレルキャリア等々が世代を超えて支持を得てきている背景もここにあります。そして利他性は利益や持続可能性と二者択一ではなく、相互補完関係にあるのです。あるいはこれからのサステナブルな社会システムに利他性は不可欠と言ってもよいのではないでしょうか。

 

今日のDagens Nyheterに〈若い男性の犯罪率が急速に減少している〉との記事があります。

 

その背景はインターネットによる透明性により社会的に監視されている現在は、単純に犯罪を犯しにくくなっている、とのこと。

〈正直者、ナイーブさがペイする時代〉のようです。