フィンランドの教育の成功についての「異論」by Gabriel Heller Sahlgren

4月21日のDagens Nyheterの意見投稿欄に、「フィンランドはお手本ではないー学校の成功が誤解されている」という記事が掲載されています。


著者のGabriel Heller Sahlgren is research director at the Centre for the Study of Market Reform of Education (CMRE), an affiliated research fellow at the Research Institute of Industrial Economics in Stockholm, Sweden, and a PhD student at the London School of Economics.

著者によれば、PISAによるフィンランドの教育の成功は、一般的に言われているような近年の政策の成果ではない。

高い教員養成教育の水準、少ない私立学校の比率、学校監察機関や全国統一学力テストがないこと、宿題や授業時間が少ないことまでが成功要因にあげられることがある。

しかし、著者によれば、戦後の社会文化的な要因が主因であり、むしろ近年の政策はPISAの結果の悪化につながっている。


19世紀のフィンランドはロシアの自治領で、スウェーデン統治時代の伝統があった。スウェーデン系人がエリートで、フィンランド人のナショナリズムの高騰と共に、フィンランド人の教育の重要性が強調された。

他の北欧諸国は1814年から1848年の間に学校教育を義務化しているが、フィンランドは1921年になって初めて学校教育が義務化された。1937年の時点でも小学校教育を受けていない子どもが13%もいた。

このような背景から教師の重要性、社会的地位が高まり、戦後教育水準は急速に上昇した。

フィンランドの経済発展が他の北欧諸国より遅かった影響もある。生徒にとっても依然ハングリー精神があったのだ。

つまり、フィンランドの教育の成功は「発展途上」の現象であり、経済成長、他の北欧諸国の水準に達すると共にその成功度は低下してきた。

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以上が著者の意見の趣旨です。
しかし、私は色々異論があります。

「発展途上」国の一時的な現象、とあります。しかし、近年のPISAの結果で上昇しているシンガポールや日本はもちろん途上国ではありません。経済が成熟すればPISAの結果が伸びない、というのは説得力がありません。

② そもそもPISAの結果だけで「教育」や「学力」の成果を測定するのは無理ですね。常々、「創造性」や「自己効力感」など、PISAでも測定していないスキルや能力が21世紀の職業社会では大切、と私は主張してきました。