創造性と幸せの関係 by 佐宗邦威

『世界のトップ・デザインスクールの創造的問題解決』佐宗邦威著 

クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2015年08月04日発売)

 

佐宗邦威氏はbiotope(株)代表取締役社長兼チーフイノベーションプロデューサー。

イリノイ工科大学デザイン学科修士課程修了。東大法学部卒業後、P&G入社。(株)ヒューマンバリューを経て、ソニー(株)デザインセンターにて全社の新規事業創出プログラム(Sony Seed Acceleration Program)の立ち上げなどに携わった後、独立。技術シーズの新規事業化や新規事業の立ち上げなど共創型イノベーションプロジェクトのファシリテーション、プロデュースを得意としている。

Design School留学記−ビジネスとデザインの交差点

 

 

本書の最終章は〈デザイン思考は幸せに生きるためのライフスキル〉と題し、デザイン思考/創造性と幸せの関係を論じています。

 

以下は引用です。(pp 224, 227)

 

 

「日々、自分なりにクリエイティビティを発揮して、たえずモノを創りながら生きる生き方って、幸せだなあ」と思えた。

 

日々課題をこなしながら、プロジェクトを回しながら、私は自分が今まで使っていなかった脳を刺激され、それが心地よいと感じるようになってきました。

 

日々生きているその瞬間に自分の見ている情報が、新たな創造の種になるものであり、ネタになりうるということに気づいたときから、私の生活は変わりました。

 

「昔は、客観的に必要とされるアクションやスキルに目をむけていたけど、自分がやっていて楽しい、もしくは、知らぬ間に集中していることをやる、ということをより大事にするようになった」(ロンドン芸術大学天野剛氏)

 

デザイン思考の技術を学ぶことで、結果的に、自分なりの創造力を発揮して日々何かしらを生み出すという生き方を学んだ。

 

夕食をつくるということですら、以前は好きではありませんでしたが、いまではそれも一種の創作であり、ひとつのデザインだと思うようになり、進んでやるようになりました。

 

生活や環境に不満を感じたときには、愚痴をいう前に「本当の課題はなんだろうか?解決策を考えてまずは小さくてもつくってみればいいや」と思えるようになりました。

 

 

佐宗氏は本章の中で、「右脳で感じると幸せな気分になれる」と、脳科学者のジル・ボルト・テイラーのTEDトークを引用しています。(下のビデオ)

統合失調症を研究していたジル・ボルト・テイラー博士が脳卒中に襲われ、自分の左脳の機能が停止していく中で、「右脳で感じると幸せな気分になれる」と悟るプロセスを述べたものです。

 

創造性と幸せの関係について私自身はこれに加え、〈関係財〉〈社会的資本〉が重要な変数ではないか、と考えています。(下のスライド)

 

 


本書の第5章では、〈T字型人材からH字型人材〉への変化の必要性が提言されています。

〈H型人材とは、強い専門性が1つあり、他の人の専門性と繋ぐ横棒を持ち、ほかの人とつながってHになるという”人と繋がりやすい”人材の像です。〉p202 写真参照

入山章栄氏(早稲田大学ビジネススクール准教授)は本書の序文で、〈これから求められるのは越境しながら活動するバウンダリー・スパナー=H型人間〉と論じています。

我が意を得たりです。そして自分自身もバウンダリー・スパナー=H型人間を目指してきた、と再確認した次第です