フィンランドのJuha Sipiläs (中央党)新内閣が5月29日に発足し、Finland, a land of solutions - Strategic Program of the Finnish Governmentというタイトルの戦略プログラムが5月27日に公表されました。
その後の動きをレポートします。
Juha Sipilä首相は、6月2日の国会での演説で、戦略プログラムの目標や内容について具体的に述べています。以下がそのポイントです。
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2025年のフィンランドは信頼に基づき、すべての国民が重要だと感じ、独創的で、思いやりがあり、安全な国である。
It is our goal that in 2025, Finland will be an inventive, caring and safe country where we all can feel important and that our society is based on trust.
この目標に到達するために、以下の5つの分野目標を設定した。
- improving employment and competitiveness 雇用と競争力を改善する
- reforming competence and education 能力と教育の改革
- promoting wellbeing and health 幸せと健康を助長する
- facilitating the bioeconomy and clean solutions バイオエコノミーとクリーンなソリューションをファシリテートする
- reforming ways of working through digitalisation, experimentation and deregulation デジタル化、実験、および規制緩和による働き方の改善
具体的には政権期間内に以下のような26のキープロジェクトを選び、実践する。
We will reform employment services to better promote employment. 雇用サービスの改善
We will dismantle incentive traps that hinder acceptance of work and reduce structural unemployment. 仕事を拒否することを妨げ、構造的失業を減少させるためにインセンティブのわなを取り壊す
We will increase housing construction. 住宅建設を増やす
We will promote the creation of new learning environments and introduce digital materials to comprehensive schools. 新たな学びの環境を創出し、基礎教育にデジタル教材を導入する。
We will expand the ‘Schools on the Move’ project across the country to ensure one hour of physical activity each day in comprehensive schools. 基礎教育において毎日一時間の体育活動を行う ‘Schools on the Move’を拡大する。
We will implement reform in vocational upper secondary education and develop the youth guarantee system towards a community guarantee.
We will improve home care for older people and enhance informal care. 高齢者の在宅ケアを改善し、インフォーマルなケアを増やす
We will enact a programme to address reform in child and family services. 子どもと家族サービスの改善のプログラムを制定する
We will promote the cost-efficient transfer to carbon-free, clean and renewable energy. We will stop using coal in energy production and halve the use of imported oil for the country’s needs during the 2020s. クリーンで再生可能でコスト競争力のあるエネルギーを奨励する。2020年代にエネルギー生産のための石炭輸入をなくし、国内需要のための石油輸入を半減する。
We will streamline legislation to reduce the burden from regulation. 規制を緩和するために法律を合理化する
We will digitalise public services. We will improve leadership and adopt a culture of experimentation. 公共サービスをデジタル化する。リーダーシップを改善し、実験の文化を取り入れる。
We will implement significant structural reforms. 大幅な構造的な改革を実践する
We will implement pension reform on a tripartite basis under the agreement reached in the previous government term. 前政権で合意に至った三者による年金改革を実施する。
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新政権は9月8日、国際競争力を強化するための政策を発表しました。
9月28日には、5つの分野目標と26のキープロジェクトを実践するアクションプランが公表されました。
このアクションプランはキープロジェクトと戦略的構造改革のタイムスケジュール、手段、および財政的裏付けを含みます。
財源分配の内訳は以下のようになっています。
- Employment and competitiveness, EUR 170 million
- Knowledge and education, EUR 300 million
- Wellbeing and healthcare, EUR 130 million
- Bioeconomy and clean technologies, EUR 300 million
- Digitalisation, experimentation and deregulation (procedures), EUR 100 million
それぞれのキープロジェクトに担当大臣が配置され、全体のアクションプランのモニターのために大臣のワーキンググループが設置されました。Ministerial working groups and responsibilities for key projects
Juha Sipilä首相(53)は2011年から国会議員、2012年から中央党党首。ITのエンジニアで、自ら創設した企業を35の時に30億円で売却し、巨財を得た新しいビジネスセンスを持った政治家として注目されています。これまでの戦略プログラムのやり方もビジネスの手法を取り入れており、その成果が注目されます。
日本をはじめ、世界でフィンランドがベーシックインカムを導入するとの報道が流れました。正確には2017年から一部の地域や年齢層をターゲットに開始する、上の分野目標の5番目にある〈実験〉、キープロジェクトの中にある〈実験の文化を取り入れる〉試みの一つのようです。