5月に日本で買った『シルバー民主主義 -高齢者優遇をどう克服するか』(八代尚宏、中公新書、2016)を読みました。
急激な少子高齢化により、有権者に占める高齢者の比率が増加の一途にある日本。
高齢者の投票率は高く、投票者の半数が60歳以上になりつつある。
平成28年度国家予算の歳出総額に占める年金、医療、介護などの社会保障費の比率は33.1%。
公共事業、文教及び科学振興、防衛、その他の歳出(食料安定供給、エネルギー対策他)の合計(26.7%)をはるかに上回る。 さらに歳出総額の約4分の1が国債費(債務償還と利払)である。 社会保障費は借金に依存しています。
2015年の日本政府の債務残高の対GDP比は248%で、ギリシャ(178%)、米英仏など(106-89%)、デンマーク(46%)、スウェーデン(44%)をはるかに上回ります。
現在の我が国の債務残高は対GDP比で歴史的にも国際的にも、例を見ない水準である。しかも、急速な高齢化の進展の下で、債務残高累増の趨勢は未だに止まる展望が見えない。(財政制度等審議会「平成28年度予算の編成等に関する建議(平成27年11月24日)」)
本書は財政赤字の改善には年金と社会保障の制度改革が不可欠だとしており、具体的な解決策を示しています。公的年金支給開始年齢の70歳以上への引き上げ、専業主婦優遇の年金・税制の廃止など。
問題はシルバー民主主義により、このような必要な制度改革が全く進んでいないことです。
選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公選法が6月19日に施行されました。「25歳以上」から 「20歳以上」に引き下げて行われた1946年の衆院選以来、70年ぶりの改革です。約240万人が新たに有権者に加わりますが、その投票率は不明です。
Silver democracyをネットで検索すると、Foreign Affairs誌(2013-07-18)の記事"Japan's Silver Democracy-The Costs of Letting the Elderly Rule Politics"が一番古いようです。