今年の夏、スウェーデンではスウェーデンの価値についての政治論争で盛り上がりました。
7月にゴットランドで開催された"スウェーデン最大の政治的な出会いの場"Almedalsvecka(1968年から開催されています)では、主要政党の党首が全てスウェーデンの価値について触れました。
Stefan Löfven社民党党首は、仕事と経済的自立、と主張しました。
Anna Kinberg Batra穏健党党首は、"att göra rätt för sig" (やるべき自分の責任を果たすこと、補助金などの依存せず、経済的に自立する、と捉えられることが多いようです)
Ebba Busch Thorキリスト教民主党党首は、信頼、自由、平等、人権など、を取り上げました。
昨年の難民危機以降、スウェーデンの価値観 vs 西欧的普遍的価値観が政治論争の争点に移ってきている、と報じられました。
例えば人権、平等、民主主義などの基本的価値観は西欧社会の普遍的な価値観でスウェーデン特有のものではない、と数年前までは考えられていました。
このような背景からDagens Nyheter紙はスウェーデンの価値についての世論調査を実施し、12月4日の紙上でその結果を記事にしています。
この調査では〈もしあるとするなら、あなたにとってスウェーデンの価値とは何ですか?〉というオープン(複数回答)な質問が1017人の有権者にされました。
上のグラフがその結果です。
①平等、基本的人権(19%)、②民主主義、自由、人権、オープンさなど西欧的価値(13%)、スウェーデンのノルム、ルール、伝統、スウェーデン語など(13%)、などが上位に挙げられています。
その一方、36%は分からない、と答え、一割が、質問はナンセンス、と答えています。
社民党支持者の中では42%もが分からない、との答えです。
スウェーデンの価値の捉え方はバラバラで、一律の答えはなさそうです。
DNのHanne Kjöller論説委員は〈不明確なスウェーデンの価値観の定義〉と題する論説を書きました。
難民危機、Brexit、トランプ現象などで〈スウェーデンの価値観〉が新たな論点に浮上してきているようです。
2015年末のスウェーデンの人口は985万人、うち168万人(17%)が外国生まれです。
一方日本がどんな社会を志向するのか、〈日本の価値観〉についての議論にも期待したいものです。一度スウェーデンの価値観と日本の価値観をテーマにワークショップも企画してみたい、と考えています。
以下は関連のブログ記事などです。
・スウェーデンと日本の国民性(幸せについて)by 明治大学鈴木ゼミ生
・幸福の文化人類学、幸福の教育学
Geert Hofstedeの文化の多様性についての調査についての著名な本を読まれた方も多いのではないでしょうか。
この画像は調査結果について国別の比較ができるサイトで日本とスウェーデンを比較した結果です。 Hidehisa Matsumotoさんご紹介ありがとうございました。