著者は新進気鋭のAIと経済学の関係研究のパイオニア。
著者は下のような明確なシナリオを提示しています。
2030年頃から 第4次産業革命 汎用AI・ロボットの進行
2045年頃には 純粋機械化経済の到来 (上の図の下側)
「純粋機械化経済」では、労働が必要なくなり、AIやロボットなどの機械のみが直接的な生産活動を担うようになります。機械が「生産の手段」から「生産の主役」になり代わるわけです。(p. 173)
純粋機械化経済においては賃金労働が存在しない。(p.195)
このようなシナリオに対して、個人で、そしてマクロでどのように対応すべきなのでしょうか?
”最大で人口の9割が失業する可能性もある”と筆者は推計しています。
それでも機械に奪われにくい仕事、として以下の三つの分野を筆者はあげています。(pp. 160-161 )
・creativity 系、創造性
・management系、経営・管理
・hospitality系、もてなし
Frey & Osborneの論文「雇用の未来」では人間に残される仕事のスキルとして、創造性と社会的知性(social intelligence)が挙げられています。
マクロ政策としての筆者の提言はベーシックインカムです。
著者は"おわりに"、で「有用性」についての興味深い議論を展開しています。
役に立つが故に価値あるものは、役に立たなくなった時点で価値を失う。(中略)会計士の資格は会計ソフトの普及で、運転免許はセルフドライビングカーの普及で、英会話能力は自動通訳機の普及で、有用ではなくなり、価値を失うかもしれません。(pp 236-237)
筆者によれば有用性は20世紀前半のフランスの思想家・小説家ジョルジュ・バタイユが提示した概念で、バタイユは有用性を批判する思想を展開しました。
バタイユは「有用性」に「至高性」を対置させました。「至高性」は、役に立つと否に関わらず価値のあるものごとを意味します。 (p.237)
第4次産業革命(汎用AI・ロボット)、純粋機械化経済の時代に備え、個人として考え、対応するべきことは、以下の二点、と要約できます。
①汎用AI・ロボットには出来ないスキルを習得する
②役に立つと否に関わらず価値のある「至高性」を追求する