この報告書"PUTIN’S ASYMMETRIC ASSAULT ON DEMOCRACY IN RUSSIA AND EUROPE: IMPLICATIONS FOR U.S. NATIONAL SECURITY" (プーチンのロシアとヨーロッパにおける民主主義に対する不釣り合いな攻撃:米国の国家の安全に対する意味、2018-01-10)には北欧諸国のサイバー攻撃対策も記述されています。(pp. 109-112)
米国のいわゆるロシアゲート疑惑が世界を揺るがしていますが、この報告書は米国上院の外交委員会で作成されたものです。
スウェーデンや北欧でも外国からのサイバー攻撃がよくニュースになります。
2015年4月にフィンランドでは総選挙がありました。本報告書によれば、選挙キャンペーン中にツイッターで国民を混乱させる情報攻撃があり、フィンランド政府は最近米国のハーバード、MITの専門家を採用し、100人以上の政府スタッフとサイバー攻撃の対応策を練っているとのことです。
またフィンランドはEUとNATOが共同で情報攻撃を含む政策のシンクタンクとなる The European Centre of Excellence for Countering Hybrid Threatsをヘルシンキに誘致しました。
スウェーデンではかつて冷戦時代の”総合防衛”(軍事防衛、経済防衛、市民防衛、心理防衛)政策の一つの柱は心理防衛でした。
現在はMSB(民間防衛庁)がその任務を背負っていますが、1月14日、スウェーデン政府は新たに心理防衛庁を作ることを公表しました。
心理防衛の重要な任務は、平和時、戦時の国民の防衛意識を高め、戦時にもマスメディアが機能し、役所が国民に情報伝達でき、スウェーデン国民の意識に影響を与えようとする外国のキャンペーンに対抗することです。
9月9日にスウェーデンでは総選挙が予定されていますが、ロシアのサイバー介入のリスクが噂されています。
スウェーデンでは初等教育からデジタル・スキルに力を入れています。その中には情報の信頼性についての判断能力も含まれます。
スウェーデンの子どもたちに人気のキャラクターBamse(バムセ)もフェイク・ニュースの危険を知り、情報源をクロスチェックする重要性を伝えたとのことです。
この報告書では、北欧諸国からの教訓として、”よく教育された国民に対しては情報攻撃も効果的ではない”と結論し、批判的思考を育成する教育、市民の間の信頼感が相対的に高いこと、汚職等が世界でも一番少ないこと、などが触れられています。
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