Art Brut Sverige och Japanが日瑞国交樹立150年の記念すべき年にスウェーデンで開催されたことは素晴らしいことです。
このイベントを全面的に支援されて来た渡邉芳樹・元駐スウェーデン日本大使は、2013年2月にラーシュ・ヴァリエ駐日スウェーデン大使(当時)との対談で2018年の日瑞国交樹立150年のことを取り上げられました。日本とスウェーデンの多くの皆さんのご尽力で今回それが具体的な素晴らしいイベントになったことは誠に感慨深いものがあります。
Art Brut はジャポニズムの流れを継ぐ日本から欧米への文化の情報発信と私は理解しています。
日本は福祉先進国スウェーデンをお手本としてこれまで社会福祉の分野でも様々なことを学んできました。
しかしアール・ブリュットは逆に日本からスウェーデンや欧米への情報発信、という点で新たなコラボの可能性を含んでいます。
日本とスウェーデンの交流はもちろん2018年末で終わる訳ではありません。2018年に明らかになる共通の関心や種を2019年以降もメンテし、育てて行く必要があります。私はこの課題を”Beyond 2018”と呼んでいます。
Art Brut Sverige och Japan プロジェクトに少しだけ関わらせて頂いた経験を元に、アール・ブリュットの分野でのBeyond 2018への期待をあげてみます。
渡邉芳樹・元駐スウェーデン日本大使は6月3日に開催された国際フォーラムにおける基調講演「アール・ブリュットを通じた新しい日瑞交流の始まり」の中で、今秋『スウェーデンのアール・ブリュット発掘 (Findings of Art Brut in Sweden – Creativity of Unintentional Arts in Daily Life produced by Self-taught Artist)』(平凡社、小林瑞恵氏との共著)が出版されることを明らかにされました。
本書の公開の機会に早速"Beyond" Art Brut Sverige och Japan 2018について意見交換の場も作って頂きたいものです。
2020年には東京五輪、そしてパラリンピックが開催されます。障害者による文化芸術活動の推進に関する法律が本年成立し、アール・ブリュットへの期待も高まります。
6月3日の国際フォーラムでヨーテボリ市のBorghild Håkansson氏は、2021年(ヨーテボリ生誕400年)にオープンが計画されている美術館構想にoutsider art, annan konstと呼ばれるアール・ブリュットが含まれていることを明らかにし、日本からの参加も呼びかけられました。
ヨーテボリの美術館構想には、単に障害者の芸術には限定せず、例えばリタイア後、病気欠勤、失業者など、健常者のoutsider artも含まれ、人生100年時代の幅広い芸術にチャンスが与えられるようです。
野沢和弘さん(毎日新聞論説委員)はフォーラムの最後の発言の中で、「私には自閉症の子どもがいるが、30年経っても何を考えているのかがよく分からない。アール・ブリュットの作品を鑑賞するのは私にとって障害者の内面を探ることだ」と結ばれました。日瑞両国のアール・ブリュットに障害者も健常者も一緒に触れあい、その触れ合いの中から生まれてくる新たなインスピレーションとイノベーションに期待したいものです。