世界価値観調査はウェブサイトでテーマや国を自分の関心に合わせて閲覧でき、非常に興味深いです。
世界価値観調査 (WVS, World Values Survey)は1981年に欧州価値観調査(EVS、European Values Study)から誕生しました。
WVS は面接での詳細なアンケートによって行われています。WVS のウェブサイトでこれらのアンケートをすべて見ることができます。最新の調査におけるアンケートでは約250の質問が行われました。各国で1000人から3500人にアンケートを施し、第四回の調査では一カ国当たり平均1330人、世界累計で約92000人にアンケートが行われました。
〈人は信頼できるか〉
例えば、質問の一つは
一般的にいって、人はだいたいにおいて信用できると思いますか、それとも人と付き合うには用心するにこしたことはないと思いますか。
だいたい信用できる、と答えた人の比率が高いのは、オランダ(67.4%)、中国(63.1%)、スウェーデン(61.8%)など。日本は38.8%でした。
これは半世紀近くの私自身の経験とも合致しています。スウェーデンであまり信用できない、と思うような人に出会ったことがないのです。
福祉社会の前提条件には制度を悪用しない連帯意識などがあります。性悪説の社会では福祉国家は成り立たないでしょう。
〈新しいアイデア、創造的、自分のやり方〉
人によって大切なことは異なります。次のような人がいるとすれば、それぞれのあり方について、あなたはどの程度当てはまりますか。
新しいアイデアを考えつき、創造的であること、自分のやり方で行うことが大切な人
私に非常によく似ている、似ている、と答えた人の比率は、スウェーデンが52.2%、アメリカが35.2%、オーストラリア40.0%、日本20.0%です。
〈同棲のイメージ〉
次にあげるような人々のうち、あなたが近所に住んでいて欲しくないのはどの人々ですか。
同棲カップル
はい、と答えた人が多いのは韓国(50.6%)、日本(21.4%)。スウェーデンは0.3%でした。
〈同棲のイメージ〉は少子化、出生率とも関連が大きそうですね。
〈ボランティア活動など〉
労働組合、スポーツ、学習サークル、慈善団体、環境保護団体、消費者団体、その他のボランティア活動への参加率もスウェーデンは世界のトップレベルです。政党にアクティブまたは消極的に加盟している人の比率はスウェーデンが12.1%、アメリカが43.3%、日本は5.2%。
米国の政治学者イングルハートは「文化的な価値観は、社会的・経済的な要因に影響されるのではないか」と考え、以下のような二つの文化的な対立軸を設定しました。
- 「伝統的価値(前近代社会)」vs「世俗ー合理的価値(近代社会)」
- 「生存価値(産業社会)」vs「自己表現価値(ポスト産業社会)」
伝統的価値というのはたとえば権威や伝統的な家族の価値観を尊重し、宗教/親子関係を重要視する一方で、離婚/妊娠中絶/安楽死/自殺を否定するような価値観。世俗ー合理的価値というのはこれらにとらわれない価値観が想定されています。
生存価値というのは生きて行くのに精一杯であること、自己表現価値は生きていく経済的な力はあるのでその上で自己表現に重きを置く、LGBTに代表されるような多様な生き方を認める価値観といったニュアンス。
「世界価値観調査」による回答をこの対立軸上にプロットした図は「イングルハート-ヴェルツェル図」と呼ばれます(図)。
- 農業段階から工業段階へ社会が発展していくと、社会の価値観が伝統的なものから世俗的なものへと移っていく。
- 同じ文化圏の国は近くにまとまり、クラスター化している。
- 日本は「世俗的ー合理的価値観」がきわめて高い。
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世界価値観調査の質問の一部は現役時代、学生さんらにも答えてもらって変化を伺おうとしていました。日本もスウェーデンも社会の変化は急速で価値観も大きく変化しています。
価値観の"変化"は興味深いテーマです。