参院選の確定投票率は選挙区48.80%、比例代表48.79%でした。”地方議会が住民投票条例を制定する際、投票率が半数に満たない場合、開票を見送るルールを設ける例が少なくない。半数割れは投票結果そのものの有効性に疑問を生じさせるおそれがあるからだ。”(日経7月22日社説)
例えば総務省の「目で見る投票率」という資料を見ると、投票率の長期的低下傾向、特に選挙に無関心な若者の傾向が顕著です。今回の参院選の18歳の投票率は34.68%、19歳はわずか28.05%でした。(速報値)
ーーー
私はスペインのマジョルカ島でのバカンス中に参院選がありました。
EU域内の移動にはパスポートは不要。携帯電話も私が住んでいるスウェーデンと同様に追加料金なしで使え、その意味では海外に来ている感覚がありません。
ホテルやビーチで聞こえてくる言葉は、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、スウェーデン語、ノルウェー語、デンマーク語、オランダ語のほか、ロシア語、時には中国語、日本語などで、ありとあらゆる国から観光客が来ているようです。
第二次大戦、ホロコーストは本当にあったのか、と疑わせるほどの繁栄と平和です。
ーーー
私の両親は第二次大戦の影響もまともに受け、苦労した世代です。
幸いなことに団塊の世代の私は70年間平和を享受できました。この平和は何としても維持しなければなりません。
政治に無関心なほどの無責任はありません。
低い若者の投票率とその対応策については私の考えをメモしてみます。
------------------------
自己効力感(self-efficacy)という表現を聞かれた方も多いと思います。
心理学者Albert Banduraが提唱したコンセプトで、ある状況のもとでたとえば目標を達成する、といった結果を出そうとする際「自分がうまくできるかどうか」という予期のことをいいます。
私は現役時代、学生さんの到達目標のひとつに自己効力感をあげていました。
ここでは選挙の投票率を議論しますが、自己効力感の観点からは、”より良い社会を作るために自分でもできることがあり、自分の一票に意味がある”という目標についての行動、と捉えることにしましょう。
バンデューラは自己効力感(自信)を生み出す源として以下の4つをあげています。
①達成要因:過去に自分が成功した経験
②代理経験:上手く出来ている他人をモデルとして観察すること。ロールモデル
③言語的説得:自分に能力があることを言語的に説明され励まされること。
④生理的情緒高揚:生理的な何らかの刺激によって気分が高揚されること
スウェーデンの学校では早期から成功体験をゲットできる機会を多々提供しています。
就学前学校の指導要領には、「1歳からの就学前学校(Förskola)は学校教育システムの一部であり、民主主義の基礎の上に成り立っている。スウェーデン社会のベースにある基本的人権や民主主義的価値観への尊重を学び習得させる。」と最初に明記されています。
具体的には子どもの参加と影響力(2章3節)で、「すべての子どもは学び方と学ぶ内容について十分な影響力をもつべき」と書かれています。
例えばスウェーデン南部Helsingborgのプレスクールでは、子どもたちがよく遊ぶ近くの公園の改善プロジェクトを実施し、改善案を市に提示しました。市はその一部を採択し、子どもたちは自分たちの意見や発言が実際に社会の改善にインパクトがあることを実体験しました。
私の孫がいっているストックホルムのプレスクールでは、ルールを自分たちで作らせるプロジェクトも実施していました。ルールは先生や学校に与えられるものではなく、自分たちも影響力を行使すべきもの、との考え方です。
両角達平さんのブログ記事「スウェーデンの若者の選挙の投票率が高い理由がわかる12記事」には、貴重な情報が満載されています。すべて若者の成功体験の機会を与え、自己効力感を高めるチャンス、と捉えられるでしょう。
-
スウェーデンの若者政策と余暇活動 余暇活動について「Meeting
Placeは、職員と若者が施設の運営や計画にともに責任を持ち自治を機能させなければならない。」((Ungdomsstyrelsen, 2009))
若者の投票率を上げ、シルバー民主主義を抑制するためには、やはり早期からの学校教育などで自分でも社会をよりよくすることに貢献できる、自分の一票にも意味がある、という自己効力感を持ってもらうことが必要でしょう。
参考資料:
Bandura, Albert, SELF-EFFICACY MECHANISM IN HUMAN AGENCY, American Psychologist, Feb. 1982
目で見る投票率、総務省選挙部、平成31年3月
両角達平「スウェーデンの若者の選挙の投票率が高い理由がわかる12記事」