図書館は退位すべきではない by Hédi Fried

 

Hédi FriedさんのDN紙の意見記事”Biblioteken får inte abdikera 図書館は退位すべきではない”を読みました。

 

Hédi Friedさんは1924年ルーマニア生まれ。(93歳) AuschwitzBergen-Belsenにおける強制収容所で生き延び、1945年7月にスウェーデンに逃避。強制収容所の現実を伝え、人種主義を批判する活動で、例えば1997年のEuropean of the year, 2015年のRaul Wallenberg賞などを受賞。

 

DN紙の記事のHédi Friedさんの主張のポイントは以下の通りです。

 

・図書館は国民の教養のために必須であり、”退位”は出来ない。

・スウェーデンが農業国家から高度産業社会に変身させたのは、他の多くの欧州諸国のように多くの命を犠牲にした革命ではなく、Lene Rachel Andersen とTomas Björkman が ”The nordic secret” (2017) Bildung(教養)と呼んでいるものである。

・今日のスウェーデン社会では残念ながら教養のプライオリティは高くない。

・国民に高い教養がなければ民主主義の危機につながる(後述)。

 

先日米国上院の報告書"PUTIN’S ASYMMETRIC ASSAULT ON DEMOCRACY IN RUSSIA AND EUROPE: IMPLICATIONS FOR U.S. NATIONAL SECURITY" (プーチンのロシアとヨーロッパにおける民主主義に対する不釣り合いな攻撃:米国の国家の安全に対する意味、2018-01-10)を紹介しました。

 

この報告書では、北欧諸国からの教訓として、”よく教育された教養の高い国民に対しては情報攻撃も効果的ではない”と結論し、批判的思考を育成する教育、市民の間の信頼感が相対的に高いこと、汚職等が世界でも一番少ないこと、などが触れられています。

 

Hédi Friedさんはハンガリーやポーランドの政治状況をフォローしてきたMaria Leissnerさん(自由党元党首)の記事”Vägkarta för nyvalda auktoritära populister=新しく選ばれた独裁的ポピュリストの道路地図"を引用しています。

 

Maria Leissnerさんの経験によれば、独裁的ポピュリストが民主主義の力を剥がしていく道路地図は以下のようなステップです。

 

・憲法を守る裁判所など司法権をコントロールする。

・公共放送を政治化する。ジャーナリストやメディアを脅かし、自己糾弾する状況を作る。

・官僚の政治化。政治的に中立な官僚を辞めさせ、政治的に忠義な官僚に置き換える。

・大統領令、または国会のイニシャティブで、通常の議論のプロセスなしにバタバタと特急で法制度を変えていく。

・児童補助金を引き上げたり、国境を閉鎖したり、国民の人気取り政策をとる。

・オムビューズマン、人権擁護組織などを無力化する。

・人種や性的マイノリティーの保護システムを撤廃する。

・国営企業、知人友人などに経済的利益を与え、”親分子分関係”を作る。

・ソーシャルメディアで政府案の現実性を強調する。強いリーダーは薄情な国民の犠牲になっている、と伝える。

 

などなど14ステップが挙げられています。

 

Economist Intelligence UnitのDemocracy Index 2017では、日本の民主主義は23位で"flawed democracy=欠陥のある民主主義"、Media freedom ranking では日本は31位で"partly free"とされています。

 

日本の民主主義を守るために今何が必要なのか、議論が必要です。